オヤツのオトモ(7)似たもの同士
石川優吾著『カッパの飼い方』1巻
集英社 ヤングジャンプ・コミックス、2003年、800円

 私は河童に似ているそうだ。それも黄桜のCMのお色気系ではなく、ピンポンパンのカータン系。丸顔にうっとりした目付きと、よく口を尖らせているのが原因か。

 そんな私が自信を持ってお薦めする河童本が、『カッパの飼い方』という漫画である。物語は架空の昭和40年代が舞台。巷では第二次河童ブームが起こり、河童が人間にペットとして飼われている。主人公の「私」もペットショップで仔河童のかぁたんを買い、飼育書を読んで試行錯誤しながら育て始める。

 この漫画の一番すごい所は、読んでいて思わず自分も河童を飼いたくなる所だ。主人公の青年のモノローグで綴られる淡々とした日々の描写と筋運び、それに河童用オモチャの『河童力士』や好物の『尻子玉キャンディー』等、ディテールに凝った演出が妙な現実感を醸し出している。何より、かぁたんの愛くるしさに主人公だけでなく私も骨抜きにされ、現実と空想の垣根を取っ払って、財布片手にペットショップに駆け込みたくなってしまう。

 人は自分に似た物を好むというから、私の場合、余計に愛おしいのだろう。どうせなら今日のオヤツも自分に似たような物をと思い、神保町の『STYLE'S GOOD FOOD SERVICE』でスコーンをチョイス。ゴツゴツした固いスコーンが主流な中、ここのは丸くてふっくら中もサクサクで私好み。

 丸いスコーンを食べながら丸顔の河童の漫画を読んでいる、河童とスコーンの合の子のような女がいたら、それが私です。

*こちらのコラムは[書評]のメルマガ vol.156(2004.3.11発行)に掲載されたものです。

神保町『STYLE'S GOOD FOOD SERVICE』